無線伝送メディア研究室

平栗 健史 教授

Laboratory

研究室紹介

近年、通信技術の発達や高速化によって無線LAN (Wi-Fi)や移動体通信 (4G)が普及し、通信による恩恵をいつでも受けられる社会となりました。そして、次なる次世代の無線通信は、多様性が求められています。例えばIoT (Internet of Things)では、通信速度の向上と共に様々なモノ(スマートフォン、車、家電、ドローン、ロボットetc…)すなわち、各々のアプリケーションに適した通信の品質が要求されます。そのため、これまでに研究されてきた無線の物理層やMAC層における効率/品質の向上に加え、有線のネットワーク品質、アプリケーション品質に至るまで、システム全体を統合 (クロスレイヤ)した性能の改善が必要です。平栗研究室では『無線通信の総合力』の キーワードの元に通信技術の研究をしています。

最近のトピックとして、次世代無線LANや5Gを念頭とした通信時のオーバヘッドを排除するマルチビームMassive MIMO(Multiple Input Multiple Output)伝送の研究を進めています。Massive MIMOとは百素子程のアンテナを搭載したアンテナで、本研究ではこの伝送技術を用いた鋭い指向性ビームを形成し、複数のユーザ端末に、空間多重接続を実現します。すならち、複数の無線局が同時に同じ周波数で通信を行うことが可能なため、大幅な通信効率の改善が期待できます。

主な研究紹介

無線通信のアクセス制御プロトコルの研究

主な究室の研究テーマとして、無線LANのアクセス制御プロトコルを研究しています。アクセス制御プロトコルとは、通信を行うためのやり取りを取り決めるものです。無線LANでは、CSMA/CA (Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)方式と呼ばれるアクセス制御プロトコルがIEEE 802。11規格によって標準化されており、それぞれの端末や基地局が自律分散的に送受信を行う方式となります。この方式は、パケット衝突を自律的に回避し、公平な通信を実現します。しかしながら、近年の端末数やユーザの増加、トラヒック量の増加によって、既存のCSMA/CA方式では、効率的な通信が行えず、伝送効率が低下し、通信品質 (QoS: Quality of Service)やユーザ体感品質 (QoE: Quality of Experience)に影響をおよぼしてしまいます。そこで、平栗研究室では、伝送効率を向上させるための新たなアクセス制御プロトコルの考案を行い、理論解析や計算機シミュレーション、実機による実験などによって評価を行っています。

レイヤ統合技術/Massive MIMO伝送のクロスレイヤ評価

送信側と受信側の双方に複数のアンテナを用意し、複数のアンテナから異なる信号を多重で送受信することによって一度に大量の通信を行うことで大容量通信が可能となるMIMOという技術があります。この技術は 無線LANではIEEE 802。11n という規格で実現されています。この方法により従来よりも通信スループットが飛躍的に向上しました。この方式は基本的には送信側と受信側が1:1でしたが、異なる信号を複数の受信局ごとに分離し、同時に受信できる受信側の数を増やした方式をMU-MIMO(Multi User-Multiple Input Multiple Output)といい、最新の無線通信方式として携帯電話のLTE-Advancedや無線LANのIEEE 802。11acで採用規格化されています。このMU-MIMOはスマートフォンやタブレットが増加している現在、快適に無線LANを使用するために必要不可欠な技術です。研究ではこの現行最新の無線通信方式であるMU-MIMO伝送を、物理層(ハードウェア)とMAC層(ソフトウェア)を統合してシミュレーションできる計算機シミュレーターを試作開発しています。また、現在、数百の送受信アンテナを用いて、更なる多重伝送を目指した5Gや次世代無線LANで用いられる予定のMassive MIMO伝送と呼ばれる次世代伝送方式についても新しい方式を提案しており、開発したシミュレーターを用いて比較検討していく予定です。なお、本研究は、H28-29年度総務省受託研究 「戦略型情報通信研究開発推進事業(SCOPE)、電波利用推進型研究開発」に採択され、プロジェクトチーム(新潟大、東工大)で分担して研究開発を進めている研究成果の一部です。

センサネットワーク・IoTに関する研究

センサネットワークやIoTといった技術の研究は主に実験によって評価しています。センサネットワークの研究として、Zig Beeと呼ばれる小型端末を利用した位置情報を測定するためのシステムを構築し、医療現場などで使用可能な技術の考案も行っています。また、人体通信の研究として、身体に複数の電極を取り付けることによって通信容量が増加(MIMO伝送を応用した人体間通信)できることを実験によって確認したり、アンテナから電波だけでなく、全方向に電源の供給も行えるシステムの開発なども行っています。

落雷および音波を用いた外的刺激による椎茸栽培促進法の研究開発

椎茸は誰もが一度は食べたことのある日本人に親しまれたキノコです。幅広いカテゴリで椎茸は日本の食卓を彩っています。ところで椎茸は『雷が落ちると良く育つ/生える』という逸話があります。しかし、実際に椎茸に雷を落とし観察を行った例はこれまでに報告されていません。現在、そんな都市伝説のような椎茸の栽培について、静岡県の指導林家監修のもと、電気電子通信工学科の有志の教員で『椎茸プロジェクト』を立ち上げ、精力的に研究を進めています。